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和紙と竹が生む大蛇の動き 石見神楽が守る伝統の技 2

更新日:2021年2月15日

 「立体石見神楽 1」の大蛇の動画を見ると、本物の蛇のようで、かつ激しく勇壮なことに驚くでしょう。

 これはホールで演じられたものなので火気は使っていませんが、石見で見た西村社中の『大蛇』は口に花火が仕込んであって、火を噴いてもうもうと煙を上げます。舞台狭しと動き回り、うねったり、とぐろを巻いたり、絡みついたり、切りつけられたり。扱い荒いです。


石見神楽『大蛇』 西村社中/口から火を噴くなど迫力ある演出にも耐える蛇胴



 伸び縮みする蛇の胴体を「蛇胴」といいますが、これは和紙と竹でできています。

 この蛇胴を作っているのは、「植田蛇胴製作所」の植田晃司さんご夫妻です。

 輪にした竹に和紙を貼って胴にする手法は、植田さんの祖父が提灯を見て考案したものだそうです。それまでは、白い襦袢に鱗を描いて演じていたといいますから、格段にリアリティが増して、『大蛇』の歴史を変えるような出来事だったでしょう。

 その後もさまざまな工夫が重ねられ、いまでは胴の直系は40cm、和紙の繊維をタテヨコに3枚重ねて貼り、彩色しています。2mの胴を9つつなげて1体の蛇を形づくりますので、伸ばすと約17mになります。

 植田さんが蛇胴作りを始めて50~60年。これまで約3000体製作していると言います。


(左)竹を型に固定し、そこに和紙を貼っていく (中央)竹に貼り重ねた和紙に、大蛇の鱗などの彩色をし、乾燥させる (右)蛇胴はこの形をつなげたもの


(左)蛇胴を作っている植田晃司さん (中央)型から外すと伸び縮みして蛇の動きができる。コンパクトに収納できる利点も (右)島根県の「ふるさと伝統工芸品」に指定されている


 和紙と竹で蛇胴で提灯状の蛇胴にすると、いいことがたくさんあります。

 まず、くねる蛇の動きが表現しやすいです。提灯を触ったことのある人なら、アコーディオンのように伸び縮みするのがわかるでしょう。

 紙だと彩色がしやすく迫力ある鱗が表現でき、また軽いので8頭が激しく立ち回る動きのよさにつながります。当然、演じ手への負担も小さくなります。蛇の尾も和紙でできているので、動きの中で振り回されて人に当たったりしてもケガがないという利点もあります。


 演じ手の話だと、大蛇の役は終始中腰で移動しながら舞うので、終わるころにはヘトヘトになってしまうのだといいます。そんなハードな演目ですが、アクティブでスピード感あふれる舞台を可能にしているのは、軽くて丈夫で動きを可能にする蛇胴のおかげなのです。

 1970年、大阪万博で『大蛇』が舞われてから、石見神楽が全国区で知られるようになったそうです。



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