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神楽を支える石州和紙 石見神楽が守る伝統の技 3

更新日:2021年2月9日

 蛇胴の自在でアクティブな動きを可能にしているのは、和紙です。石見地方で古来漉かれている紙は「石州和紙」と呼ばれています。石州は、石見地方ということです。古くは『延喜式』にも登場するそうですから、平安時代から1000年以上伝えられていて、税としても納められていたという地域の重要産物でした。

 楮(こうぞ)が主な原料ですが、楮の茎から繊維を取り出す際に甘皮を残しているためたいへん丈夫で、“最も強靱な和紙”といわれています。

 


 その石州和紙を漉いている西田製紙所を訪ねると、伝統的な手漉き和紙の工程がそのまま受け継がれていました。

 和紙を作るというと漉いているところしか思い浮かびませんが、作業は採ってきた楮から始まります。その手順は、すべて手作業。たいへん手間がかかって、根気が要りそうです。

○楮の木を蒸して、表皮を剥ぎ取る

○それを束にして自然乾燥する (→ 貯蔵できる)

○それを水に浸けて柔らかくなったものから、包丁で固い表皮を削って白皮にする

 (このときに表皮の下の甘皮を残す)

○白皮を水洗いして汚れを取り除く

○重曹で煮てアクを抜く

○さらに水洗いして塵などを取り除く

○木の棒で叩いて繊維を砕く

○クレゾールに1年ほど浸けておいたトロロアオイという植物の根を、叩いて一晩水に浸けておく


(左上)楮の表皮だけを取って乾かせば保存できる (右上)水に浸けて柔らかく戻したら外側の色の付いた部分を削り取る (左下)きれいに水洗い (右下)トロトロのトロロアオイ


 ここまで来て、やっと紙漉きの作業ができます。

 漉き舟という浴槽のようなところに水を張り、楮とトロロアオイを加えてよく混ぜます。

 トロロアオイはヌルヌルの粘液を出していて、楮の繊維を均等に広げる役割をもちます。

 この液体を、細かい竹製の簾(すだれ)ですくって均等に広げる作業を何度か繰り返して目指す厚さにするのが漉く工程です。

 それを乾燥してできあがるのが、和紙です。



(左上)繊維だけになった楮、トロロアオイ、水をよくかき混ぜる (中央上)簾に汲み上げて均一の厚さに広げて水を落とす (右上・左下)漉いた紙は重ねてプレスして水を出し、1枚ずつ乾燥させる (中央下)黒など色の和紙も漉ける (右下)和紙で作った中折れ帽


 原料作りも含め、どの工程も人の手でしかできないものですが、地道だったり、冷たい水に手をつけていなければならなかったり、何でも作業を機械に任せてしまう現代に残りにくいものです。  しかし、この丈夫で軽い和紙がなければ大蛇の動きはできません。反対に、石見神楽があるからこそ、「絶対に必要なもの」として石州和紙は石見に受け継がれているのです。



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