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ヒーローは神楽の中に 石見神楽が守る伝統の技 1

執筆者の写真: 旅LABO本郷 柳澤美樹子旅LABO本郷 柳澤美樹子

更新日:2021年2月9日

 石見=いわみ 地方は、島根県の西部です。そこに伝わる神楽が、石見神楽です。

 神楽というと、雅楽に乗せて巫女さんが静かに舞う貴族的なものをイメージする人が多いと思いますが、石見神楽はアクティブだったり、華やかだったり、賑やかだったり、純粋に観ていてワクワクする楽しいものです。

 いちばん有名な『大蛇(おろち)』は、大蛇に娘を取られてしまうと泣いている老夫婦の話を聞き、通りかかった須佐之男命(すさのおのみこと)が大蛇を酔わせて討ち取って助ける、というヤマタノオロチのストーリーです。


『大蛇』のワンシーン(2020年2月2日文京シビックホール/東京社中)



 石見の神楽も、神様に奉納されるという意味では他の地方の神楽と同じです。起源ははっきりしませんが、室町後期には既に舞われていたようです。元々はここでも神職が舞っていましたが、明治になって神社と国家が結びつくことで神職が歌舞に携わることが避けられ、石見では集落の人々によって引き継がれることになりました。

 浜田市、益田市を中心とした石見地方に、100以上の社中(神楽集団)があるそうです。他にも、広島県北西部や大阪・東京に出た人が結成した社中などもあり、200近い社中が活動しています。

 メンバーは、それぞれ仕事を持って普通に日常生活をしている地域の人たちです。夜や週末に練習や準備をし、公演の時間を空け、時には仕事を休んで出張公演に出かけたりしています。指導するのも地域の先輩で、親に連れられたりして子どもの頃から神楽に親しんでいます。

 神楽の演目には「儀式舞」という神事の色合いの強いものと、「能舞」という演劇性、娯楽性の高いものとありますが、子どもたちに人気なのは神様たちが鬼や大蛇などと戦う武勇伝。

「石見の子どもたちの憧れの的は、戦隊もののヒーローではなく、神楽に登場する鬼や神様なんです」

と聞いたときには、心が震えました。近所のおじちゃんやお兄ちゃんの演じるキャラクターが、かっこいいヒーローで目標だなんて、人間関係の希薄な東京にいては夢のようです。


 こうして世代を超えて石見地方に神楽が受け継がれてきたことで、神楽を舞うことだけでなく、地域に根付いた伝統工芸も守られています。

 その伝統工芸を継承する方たちを訪ねてきました。



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