隠岐で拾ったお話 その6
海からすぐに船を揚げておける船小屋
船小屋というと、京都府の伊根(いね)の「舟屋」がよく知られていますが、隠岐の島後にもあります。島の南西の都万(つま)漁港、屋那の松原に20棟ほどが並んでいます。
ここの船小屋は、伊根のように住まいと一体化したものではなく、船の屋根付きガレージのようなところです。
木造船は海中に浸したままだと船喰虫に喰われて傷んでしまうので、陸に揚げます。そこに杉皮葺きに石を置いた屋根をかけているのです。すぐ前には波が寄せています。
静かな漁港の佇まいです。それを見守る高田山と相俟って、海と共にある暮らしを象徴しています。
ただ、伊根なども同様のこの光景に、なんとなくモヤモヤとした違和感を覚えます。それはなんなのか……。
その原因が判明しました。それは、潮の干満の差でした。日本海では干満の差が小さいため、海から揚げてすぐの場所を船の定位置にできるのです。気付いたら建物ごと水に浸っていたとか、船を出そうとしたら海がはるか遠いとか、そんなことがないのです。
日本海は潮位の差が太平洋の4分の1
太平洋側と日本海側で潮位がどのぐらい違うかというと、1日の差が太平洋側では2m以上、日本海側では50cmほど。これは大違いです。
海はつながっているのに、なぜそうなるのでしょう。
潮汐は、ほとんどの日は1日に2回、月と太陽の引力に影響されて干満を繰り返します。太平洋は大きいので、その影響が大きいのですが、日本海は面積が小さいので月の引力を受けません。
日本海は、対馬海峡、関門海峡、津軽海峡で太平洋と接しているので、太平洋が満潮になって潮位が上がると、日本海側にも海水が流れ込んできます。しかし海峡が狭いため、急激に流れることができません。少しずつ日本海の潮位が上がってきたかと思う間に、今度は太平洋側が干潮になってきます。
すると日本海では潮位が上がりきらないうちに、もう下がり始める。これを繰り返しているので、干満の差が小さいのです。
わかりやすいジオサイトの看板
船小屋の近くにある看板には、船小屋自体の説明と共に、このような潮の満ち引きについても書かれています。もちろん、口頭でガイドしてもらった方がわかりやすいし質問もできるのですが、もし自分だけで訪れても「そういうことなのか」と理解できます。
図や写真もありますし、文章には英訳もついています。
この解説看板は各ジオサイトに設置してあります。ネットでも見られますので、事前に予習しておくと大事なことを見逃さないで楽しめます。(船小屋の看板)
<隠岐で拾ったお話>
その1 ジオを知るには、よきジオガイド
その3 根気のよさは岩をも通す
その4 隠岐古典相撲はタイスコアでお祝い
その5 隠岐独立! の歴史の一コマ
その6 船小屋が日本海にしかない理由
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