隠岐で拾ったお話 その3
海に向かう橋は誰が渡る?
隠岐4島には“絶景”が至る所にあるのですが、その代表格に国賀海岸の摩天崖(まてんがい)があります(西ノ島)。高さ257mもある、海に削られてできた崖で、海岸線には荒々しい岩、崖の上には牛や馬が放牧されるのどかさが共存し、夕陽のスポットでもあります。
ここの重要な見どころのひとつに「通天橋」があります。摩天崖から突き出した岩に大きな穴が貫通し、橋のように見えることからこの名がつけられています。
通天橋の穴は現在も少しずつ削り取られて広がっていて、やがては橋の部分が落下して橋脚に当たる岩だけが海に突き出す形になるのだといいます。
しかし、そもそもどうやってこんなに大きな岩に穴が開けられたのでしょう。ここは繰り返しの噴火でできた地層であることが、目で見るだけでもわかりますが、穴のところだけ特別弱かったのでしょうか。
そういうわけではありません。岩についたひび割れなど、小さな傷に波が打ち付けることで徐々に傷が広がっていき、貫通して穴が空いたのです。いくら季節風が吹き付け、波の荒い島の北西岸とはいえ、いったいどれほどの時間がかかったのだろう。
そんなことを思いながら眺める絶景、というのもジオパークの楽しさです。
冬には季節風が吹き付け、波の荒い隠岐の海岸には、このような海蝕洞が無数にある。シーカヤックでくぐったり、遊覧船で入れるところもある
雨降って地固まるや ハート岩
隠岐で、岩に空いた穴といって忘れてならないのが、明屋(あきや)海岸(中ノ島)の屏風岩に空いた、きれいなハート型の穴です。
よくまあ、これほどくっきりハート型になったものだと感心します。
ところが、この写真を撮ったのは2019年10月24日なのですが、その直後の11月初旬に(恐らく台風の影響で)岩が崩落して穴の一部がふさがり、ハートの形が失われてしまったのです。岩の形が変わるのは何万年単位の営みかと思いきや、わずか1週間で!
このあたりの岩は、酸化した溶岩が堆積してできた岩なので比較的崩れやすい性質ではあるのですが……。
ところがところが、それから1週間ほどすると、なんと落ちてきた岩などが波に流されて、ハートが蘇ったというのです。
以前からカップルで訪れると……というようなロマンチックな伝説があったハート岩ですが、ブロークン・ハートからの復活で、ますます御利益が強固なものになったのかもしれません。もっとも、頑丈そうな岩も、人生も、いつ何が起こるかわからない、という教訓と読み取ることもできるのですが。
<隠岐で拾ったお話>
その1 ジオを知るには、よきジオガイド
その3 根気のよさは岩をも通す
その4 隠岐古典相撲はタイスコアでお祝い
その5 隠岐独立! の歴史の一コマ
その6 船小屋が日本海にしかない理由
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