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開花宣言に誘われて小石川後楽園へ

更新日:2020年3月17日



しだれ桜が咲いていました

 3月14日は、開花宣言が出されたソメイヨシノに雪が降るということしの異常気象ぶりを象徴するような一日でした。そんなわけで、まだ桜の盛りが遠いことはわかっていたのですが、集まりごとがみんな中止になる中の運動不足解消に、15日日曜、久しぶりに小石川後楽園へ出かけました。

 門を入ってすぐにしだれ桜が咲き始めていて、訪れた人たちは一様にここで写真を撮って春を感じていました。

 このしだれ桜は、かつてあった樹齢100年を超すものの後継として植えられたものだそうですが、既に60年以上になるそうです。

 園内の桜は55本とそれほど多いわけではありませんが、まだ固いつぼみの木があちこちに見られました。



水の表情がさまざま

 庭園の様式は、回遊式築山泉水庭園。「大泉水」という大きな池を中心に、ほかの池や川、小さな滝が配されていて、水のさまざまな表情が見られるのが、この庭園の魅力だと感じました。

 このあたりは文京区の中でも低地で、近くには運河を造って神田川としているので、湿気が多く水稲などに適した土地だったのではないでしょうか。園内には小さな山もあって変化を見せているのですが、「築山」というぐらいなので池などを掘った土を盛って造ったのではないかと思います。(調査できていなくて、すみません)

 水戸徳川家の初代・頼房が江戸の中屋敷として造り始め(後に上屋敷になった)、二代・光圀(みつくに)が完成させました。光圀=黄門さま といえば「学問の人」というイメージの通り、作庭に当たっては明の儒学者・朱舜水の意見を取り入れ、中国風のところも感じる庭園です。

 後楽園という名称も、『岳陽楼記』の「天下の憂いに先立って憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ」からつけたというのは、有名な話です。


(上左)蓬莱島の浮かぶ「大泉水」。琵琶湖を模している。都会の大きな水面は正にオアシス (上中)園内を流れていた「神田上水の跡」。現在は流れはない (上右)京都の嵐山を模したという「大堰川(おおいがわ)」。奥に大きな紅葉があって、紅葉の名所。この上に「通天橋」という朱塗りの木橋があるが現在工事中 (下左)大泉水には鴨も渡ってきている (下中)「寝覚の滝」。木の茂る様子を木曽の山にたとえ、そこを流れる木曽川に落ちる。寝覚の床にちなんでいる (下右)さらさらと流れる「竜田川」。楓が多く、秋が楽しみ


変化ある橋が楽しめる

 水を巡るには、橋がなくてはなりません。なので日本庭園では橋の存在が重要ですが、ここでも意匠を凝らした橋が楽しませてくれます。

 庭を歩くとき、橋を渡ることはそれまでとは別の世界に入るというような意味があります。ふたつの世界をつなぐものが、それぞれに工夫されたものなのは、より趣深いものです。橋の鑑賞の仕方はよくわかりませんが、カーブがいいなとか、どうやって石を積んだんだろうとか、よく見ると興味が湧いてきます。





渡月橋

嵐山に見立てた大堰川に架かっている土橋。なので渡月橋なのだろう。ここは渡ることができるので、定期的にメンテナンスしているのでは。草が生えているところがおもしろい





西湖(せいこ)の堤

渡月橋の南側は、中国の杭州にある西湖に見立てている。そこにある堤がこれ。なので橋ではないのだが、当時新しい発想だったようで、その後の大名庭園に影響を与えたとのこと




円月橋

橋の下の半円形が水に映ると円形に見えるように、朱舜水が設計したとされる。見るからに中国風の形や欄干。石組みがかっちりとしていて、きっと力学的にも理にかなっているのだろう。急な石段が両側についている





内庭の石橋

藩邸の書院があった内庭にも池があり、中の島に2本の石橋がかかっている。どちらも同じような反りのある一枚石で、カーブがモダンな美しさ。この池では、夏に睡蓮が咲く


借景は……

 水戸藩邸の時代には、池に映るのは庭園内の木々と空だったのでしょうか。いまでは後楽園を取り巻くビルがきれいに映っています。これも、都会の風景と言えるでしょうか。

 中央の写真は、「白雲台」という展望台に上る階段です。周囲は木曽の山のイメージの鬱蒼とした森で、そこから上ると遠く妙義山、榛名山まで見渡せたといいます。

 小石川後楽園の面積は約7ヘクタール。これは東京ドーム約1.5個に相当します。わかったようでわからないたとえの代表「東京ドーム」。その東京ドームがすぐそこに見えるのですが、実感しやすいでしょうか。


まだ早春なのに見られた花

 しだれ桜以外にも、園内には花が見られました。この季節の花、いいですね。

 この冬の気温の高さで、開花の進みはかなり早いように感じます。

 この後、ツツジ、フジ、カキツバタ、アジサイ。湿地の花菖蒲田の開花期は、後楽園のベストシーズンのひとつです。


(左上から)ジンチョウゲ、ツバキの落花、ヤツデ、ヒメシャガ、シャクナゲ、サンシュユ、アセビ、ボケ、咲き残りのブンゴウメ



「後楽園」というと、ある程度の年代以上は後楽園遊園地を思い浮かべます。なかなか、後楽園の元々はこの庭園だと認識されないのですが、行ってみると浮世を忘れさせるようなやさしい空間が広がっています。

 さらに歩くなら、牛天神(北野神社)や伝通院などもあります。起伏の多い道ですが、それもこのあたりらしさです。


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