新型コロナウイルスの感染拡大で自由に旅行がしづらい環境になってから、「オンラインツアー」が工夫され、旅のメニューのひとつに考えられ始めています。たいへん話題になった琴平バスの『オンラインバスツアー』は、既に1500人以上の参加者を集めています。
しかし、「家にいながらにして旅行する」? それは究極の矛盾ではないか、というのが大方の感想なのではないでしょうか。移動を伴わない旅行って、テレビの旅番組と何が違うのでしょう。
耳にしてはいても実際に参加した方は多くないと思いますので、昨年末から4回にわたって開催され、私も参加した『隠岐4島 リモートトリップ』を事例として、私の体験と感想をご紹介します。
<利用してみようか>という方も、<企画してみよう>という方も、参考にしていただければと思います。
オンラインツアーって何をするの?
オンラインで旅行する企画の名称には、オンラインツアー、リモートトリップ、バーチャルツアーなどがあります。
プロモーションムービーのような映像を使うケースもありますが、多くは画面の向こうで誰かがリアルに観光地を見たり移動したりを織り込んでいます。
それを見るだけではテレビと同じなので、多くは現地やツアー参加者といっしょに何かを体験できるような工夫をしています。例えば、事前に送られた特産物をいっしょに食べるとか、手作り体験をするとかです。
隠岐リモートトリップの事例
今回の『隠岐リモートトリップ』は、「隠岐ユネスコ世界ジオパーク推進協議会」から「島ファクトリー」に委託して、企画されたものです。メディア向けに広報の一環として企画されたので、目的は「記事等に取り上げて」というところにありましたが、恐らく通常の企画と大きくは違わなかったと推測しています。
隠岐にある4つの有人島(=4町村)ごとに4回シリーズで行われました。日程は、下記の通りです。
第1回 海士(あま)町 2020年12月4日(金)13時~
第2回 西ノ島町 2020年12月18日(金)14時~
→ 荒天のため2021年3月12日(金)14時~に変更
第3回 隠岐の島町 2021年1月29日(金)15時~
第4回 知夫(ちぶ)村 2021年2月25日(木)14時~
所要時間は「2時間半程度を予定」ということでしたが、だいたい2時間程度に収まったと思います。
4回シリーズでしたが、各回ごとに申込みできましたので、全体としてひとつの旅ということはなく、刑事ドラマタイプ。しかし共通するところもあったので、1回でも4回通しでもそれぞれの楽しみ方ができました。
<リモートトリップの流れ>
1.開催の2~3日前に、下記が送られてくる
・『旅のしおり』
・関連するパンフレット
・地元のおいしいもの
2.当日zoomにアクセスしてリモートトリップに参加
・コーディネーター役から島全体のこと、旅のテーマなどを紹介
・ガイド役といっしょに旅
・途中に食事タイムもある
3.事後にアンケート
シリーズの共通事項
○船で港に着く
離島なので、スタートはいつも港からです。リアルな旅行で隠岐に行くと、島根県内の本土からでも「来たな」という感慨がありますが、オンラインだとその意識もなく始まってしまうので、必ず船が港に着岸するところから体験します。
4島の内、島後(隠岐の島町)だけは飛行場がありますが、メインはフェリーと高速船。島同士の交通も、もちろん船です。
○神社に参拝する
隠岐は、人口約2万3000人のところに100を超える神社があり(江戸時代には300社も!)、神社の中でも特に格式の高い名神大社も4社あります。そんなわけで、各回必ず1~2の神社にお参りをし、宮司さんからお話を聞く機会もありました。時には事前に送ってもらった「おみくじ」を同時に開けてみたりも。
○観光地に行く
現地では当日、島内数カ所にガイド役がスタンバイしていて、「その時」「その場所」に連れて行ってくれます。これは島ファクトリーがリモートトリップをする上で、重要ポイントに位置づけているところです。
隠岐には、すばらしい景色やダイナミックな自然などが豊富にあります。特に、世界ジオパークに認定されているジオサイトは圧巻です。それらの最高のショットや特別きれいな季節の写真・動画を見せる方法もありますが、敢えて生中継を選んでいます。雨が降っていた回もありましたし、風が強くてマイクに声が入りづらい瞬間もありましたが、旅行って、そういうものですよね。
景色を前に説明を聞いて、見えないものを想像してみる。ベストシーンが見たかったら、こんどは実際に行ってみる。それがリアルタイムのよさです。
○島の人と会う
行く先々にはいろいろな島の人がいて、モニター越しですが出会うことができます。マイクを通して話もできますし、チャット機能での質問もできます。
民宿のおかみさんが「きんにゃもんにゃ」という踊りをおどってくれたり、蔵元さんが「離島なのに水が豊富だからお米も穫れるしお酒もできる」という話をしてくれたり、わかめ工場では朝海から揚げたわかめが翌日には乾燥わかめとして出荷されることを教えてくれたり、宮司さんにお茶を点てていただいたり。
訪ねているのが若い移住者だったりするので、旅行者と同じような視点で話してくれるのもありがたいです。
○みんなで同じものを食べる
旅の大きな楽しみが「地元のおいしものを食べる」というのは、リアル旅行でもオンラインでも同じ。やっぱりここが旅の最高潮です。
事前に送られてきたものの中には、調理が必要なものもあり、やり方を教わりながらその場でみんなで作業します。
1回目の海士町から来たのは、巨大な岩牡蠣の『春香』です。CAS(Cells Alive System)という特殊な瞬間冷凍技術で採れたての状態を保ったままを、ツアーが始まったときに冷凍庫から取り出して水に浸けて解凍。頃合いを見て、専用のナイフと軍手(これも荷物に入っていた)を使い、貝を開けて食べます。牡蠣の身はとても一口では食べられない大きさで、とてもクリーミー。調味料やレモンを用意していたのですが、そのまま牡蠣の真髄を味わいました。
2回目の隠岐の島町では、お酒とおつまみで昼間から一杯。3回目の知夫村からはなめ味噌や漬物など。用意したごはんとよく合いました。4回目の西ノ島町からはサザエといっしょに大きな缶。この缶の中でサザエを蒸し焼きにして食べました。
自分自身で手を加えて食べるのは、リアルな旅行ではかえってチャンスが少ないので、これはリモートトリップの利点ですね。しかも、家族や友人同士で楽しめます。
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