4島をリモートトリップした感想 <旅行したい方へ>
私はご縁があって隠岐には一昨年までに5回も行っていますが、参加者の中には一度も島の土を踏んでいない人もいるでしょうし、4島全部回っていない人もいたと思います。一般の旅行者だと「隠岐」といってもイメージがなく、よく「壱岐(いき)」と混同されてしまって「九州でしょ」と言われてしまうことがあるのだとか。参加者のバックグラウンドはそれぞれなので、あくまで私が「隠岐をリモートで旅した」感想として参考にしてください。 いちばん感じたのは、「リアルでなくても重要なのは“体験”」ということでした。 その土地の味を楽しむというのは、画面のこちら側でできる最もわかりやすい体験です。特に、ただ食べるだけではなく、二枚貝を開けるという普段あまりできない、ちょっと難しいことをやってみて、その上で「食べる」というご褒美につながるのはうれしいものです。(当たり前なのですが)やってみると、2枚の貝は貝柱でつながれているんだ、と実感します。これは、実際の旅行のコンテンツにも応用できそうです。 その他にも体験できたことがたくさんあります。 例えば神社の参拝。通常、案内の人といっしょでないと、境内の看板に書いてある由緒を読むぐらいしかその神社のことを知らずにお参りだけして帰りますが、このツアーならその場でいろいろな説明を聞いた上で、時には宮司さんといっしょに参拝することができます。 また隠岐は、何億年にわたるダイナミックな「大地の成り立ち」、その上に繰り広げられる「独自の生態系」、それらと共生する「人の営み」がすべて乗っている島で、世界ジオパークに認定されています。その中のほんの一端ですが、このツアーでもジオガイドによる説明を聞きながら、体験することができました。
今回のツアーは、「行けない代わり」もありますが、「オンラインだからこそ」ということも盛り込まれていました。普通にどこかを旅して、そこで暮らしている人に声を掛けて話を聞くのはかなりの人なつこさと勇気が必要ですが、ここなら実際の生活や風習、思いなどが自然に伝わってきます。
オンラインで体験してしまうと、「もう行かなくてもいいや」、という判断になるでしょうか。人によるかもしれませんが、想像よりも「きれい」とか「おいしい」とか「おもしろい」刺激を受けると、さらにその奥への興味に誘われます。「今度は行ってみたいな」という気分になるのではないでしょうか。
オンラインツアーで知ったこと、出会った人をスタートラインに実際の旅に出られたら、予習バッチリで授業に臨んだようなもの。記憶を確かめつつ、新しいものをグイグイ吸収できると思います。
オンラインツアーは事業として成立するのか? <旅行事業者の方へ>
オンラインといっても、事業者がサービスを提供するからには利益を上げることが必須です。
ツアー内容にもよりますが、
1.人件費
2.移動経費
3.機材(撮影・配信等)
4.広報・宣伝費用
5.送付する特産物や資料+送料
といった経費がかかります。
今回の隠岐のツアーではナビゲーター役のほかに、現地でスタンバイして案内するスタッフだけで5~6人はいましたし、ジオガイドや宮司さんをはじめ説明したり実演したりという人も毎回複数いました。その人たちへの日当や謝礼が要ります。
事前に送付する食べものなどは、目に見える実費としては最大です。まして離島からの送料は割増になります。
それがなくてもオンラインツアーは成立しますが、
○味覚を通した体験は、強く印象に残るし一体感も高められる
○地元産品の宣伝になる
○生産者等地元に少しでも経済効果がある
という点で、できれば採り入れたい要素です。
ツアー料金は、島ファクトリーがこれまで開催してきた同様のスタイルのツアーで、約4000~9000円。値段の幅は、送付するものの内容と、その量によります。
ほかのオンラインツアーを見ても、地元産品を送るツアーでは5000~9000円ぐらいが多いようです。国内外多数のオンラインツアーを多数企画しているHISでは、見るだけなら1000円程度からありますが、特産品が送られるツアー、物づくりなどセミナータイプのツアーだとやはり4000円ぐらいからのようです。
全体に、参加人数にもよりますが、充分な利益が上がるとは思えません。将来的に、今後事業として成立するようなコンテンツが開発されたり、マーケットが広がったりすれば新たな展開があるかもしれませんが……。
現状では、オンラインツアーが単体で商品として成立するというよりは、リアルな旅行に誘えないこの期間により強い印象を残して、自由に旅行できるようになった暁に足を向けてもらうのが主目的だと思われます。来るべき時に備えたプロモーションとしては、より実際の旅行に近いリアル感のあるオンラインツアーは有効でしょう。オンラインツアーでファンにさせることができたら、大成功です。
印象づけるだけでなく、参加者の情報を今後のマーケティングにつなげることも重要です。事後のアンケートの活用、その後の情報の出し方、今後の実際のサービスなどに反映させられれば、自由に旅行が出来るようになった時に差が出ることでしょう。
取材の形のひとつとして <メディア関係者へ>
旅のコンテンツを制作するに当たって、現在のように編集部のある都市部から観光地へ取材に行きづらい状況は、困ったものです。
既存のオンラインツアーのコースが取材に代わるということは望めませんが、追加取材やロケハン目的ならあり得るかと思います。また、オンラインツアーが充実しているこの機会に、情報誌やネットでは得られない地元情報を収集しておくのは、今後プラスになると思います。
逆に、メディア向けにどのようなツアーを構成し、どんな情報を出すのが効果的かについては、一般向けの話ではないので個別にお問い合わせください。
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